XR 看護訓練シミュレーター

学士研究

研究概要

 UnityとVRゴーグルを用いて,「動ける・触れるVR」を実現する新たなXR技術を研究しています.またその技術を応用して,新人看護師や看護学生向けに,臨床現場で起こりうるトラブルの対応を学習する,VR訓練シミュレーターの開発をしています.

研究背景

 近年,医療業界では病院などで働く看護師が不足しており,社会問題となっています.その原因として,新人看護師の離職率が非常に高い点があげられます.なぜ,新人が多くやめてしまうのか.日本看護学会が調査をしたところ,同時に降りかかる業務に対応しきれずストレスを感じてしまう人が多くいることがわかりました.

 看護学校では主に一人の患者さんに対しての対応方法を学ぶ実習をメインに行います.しかし,実際現場に出てみると,一人の看護師あたり6~10人以上の患者さんを受け持つこととなります.するといろんな業務やトラブルが同時に発生する,ということが頻繁に起こるのです.
 ベテラン看護師は,タスクの優先順位を瞬時に考え,順番に対応していくことが出来ます.しかし,これは現場で長年培った経験からできるものであり,看護学校では教えてもらえません.そのため,まだ経験の浅い新人看護師はパニックになってしまい,ときには命に関わるような重大なミスをしてしまうこともあります.

 このようなことから,現行の問題点の把握や新たな教育方法の提案が求めらています.


研究目標

 現在提案されている教育法として,患者役と看護師役に分かれて,病室を再現した施設でロールプレイを行う手法があります.しかし,実習を行うには人手や施設の用意などコストが高いという問題点が指摘されています.

 一方で,e-Learningや映像教材などを用いて学習する手法も提案されています.しかし,映像を視聴するのみの学習は受動的であり,臨床現場で実践に移すことが難しいのではないか,という指摘がされています.

 そこで私の研究では,XR技術を用いた,低コストかつ能動的学習が可能な訓練シミュレーターの開発を行っています.低コストを目指す一方で,より効率的な学習を実現するためには,実際に体を動かして看護作業を行っている最中にトラブルが発生するという環境が重要だと考えました.そこで,「動ける・触れるVR」を実現する新たな技術の開発を行っています.
 東京大学医学部の先生や,神戸大学看護学部の先生方とともに共同研究し,より効果的な訓練の開発を目指しています.


触れるVR

 訓練は4人部屋の病室に入院している患者が,次々とトラブルを起こしてくるので,それに対応していく,というシナリオです.

 右の写真は,訓練する学生が装着するVRゴーグルに映し出される映像です.病室の風景が映し出されており,二人の患者さんや,左側に医療機器があるのが確認できます.実は左に写っている医療機器や,手前のピンク色のベッドに寝ている患者さんには,VRゴーグルをつけたまま,実際に触って体を拭くなどの看護作業を行うことができるのです!


 その仕組みは映画のCG合成などでも使われるクロマキー技術です.実は手前の患者や医療機器はグリーンバックに囲われた実験室においてある実物です.そして訓練する学生が装着するVRゴーグルにはカメラが取り付けられています.
 カメラから取り込んだ実験室内の映像に対して,クロマキー処理を行って病室の映像と,リアルタイムにCG合成をすることで,実験室内の"もの"を仮想の病室に融合させることができます.


看護学生による評価実験

 病院で行われる実務実習を終えた看護学生15名に開発したシステムを利用してもらい,訓練シナリオやシステムの評価実験を行いました.

 学生からは「実務実習でも体験できなかった,トラブル対応を予め経験できるのはとても良かった.すごく勉強になりました.」と好評を頂きました.

<訓練の様子>

訓練中は手前の患者さんの体を拭く業務(清拭)を行います.

医療機器にエラーが生じてアラートが鳴ったら早急に対応しないといけません.

清拭中でも,他の患者さんの対応も必要です.

対応が遅れると重大なインシデントが起きてしまいます.

もちろん患者さんからナースコールがかかってくることもあります.

突然家族がお見舞いに来てしまうことも!状況を判断して適切に対応する必要があります.


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